あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
「優秀なパートナーがいて萌葉も安心だね」
「ん、まあね」
軽くテーブルの上を片付け、鞄を持って入り口へ向かう。見送ろうとする萌葉にここでいいと念押しをして軽く挨拶を交わして部屋を出た。
そのまま事務所を後にし、用意してもらったタクシーに乗り込んでスマホを確認すれば漣も少し前に打ち合わせを終えたらしく間も無く帰宅する旨の連絡が入っていた。
私も同様に同じ内容の連絡を返し、ふと外を見る。
漣と婚約以降、生活に大きな変化はない。これまでだってほぼ仕事もプライベートも一緒に過ごしてきたし、漣が私の家に入り浸っているのも今に始まった事ではない。
事務所にも親にも結婚の了承は得ているし、萌葉や那由多など、友人からも祝いの言葉をもらえた。大事な人達に喜んでもらえたら、誰に祝福されずとも構わない。それが叶わない仕事だっていうのも分かっている。
仕事もしばらく先まで予定が埋まっていて、明日にも写真集発売のイベントを控えていてそれなりに忙しい。
——このまま、何もなければいいのに
仕事の都合や諸々もあって、結婚発表については事務所に一任している。それが最善だと思うし、信頼もしている。
萌葉の言う通り、私に出来ることは限られていて、やるべき事をやって静かに事を待つしかない。
流れゆく景色を見ながら、小さく息を吐いた。