あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
「及川さん、お疲れ様でした。どうぞこちらにかけて休んでてください」
「ありがとうございます」
店舗スタッフの親切に甘え、バックヤードに用意してもらった休憩スペースで一息つく。
しばらくそうしていると、イベント中和泉さんと共に席を外していた漣が戻ってきた。
「白雪」
名前を呼ばれるだけでじんわりと胸が温まり、微笑みを返す。漣は私に寄ると、目の前で膝をつき両手を取った。
「変なのが居たって小耳に挟んだけど、大丈夫?」
「相変わらず耳が早いね。平気だよ」
漣は眉を下げたまま心配そうに見てくるけれど、実際それほど気にはしていない。
漣が側にいる安心感もあるし、スタッフがきちんと制止に入ってくれて実害も無い為、これくらいの事、気にする程でもない。
「そういえば和泉さんは?戻ってきてからもずっと姿が見えなくて」
「ああ、外の対応してるよ」
「外?」
「出待ちが結構いてね。カモフラの為に車出すから、白雪はタクシー使って帰れって」
「事務所戻らなくていいの?」
「らしいよ。俺が同行するから一緒に帰ろう」