あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
そう言って漣はキャップを被せてくる。
私は漣の言う通り、和泉さんに後の諸々を任せて帰ることにした。
従業員専用の通路を使わせてもらい、準備されていたタクシーへ乗り込む。店舗スタッフ達の采配もありタクシーはスムーズに大きな道路に入ることが叶い、私たちは無事帰路に着いた。
車内で並んで座ってはいるが、私達に会話は無い。互いに外の景色を眺めて黙り込んでいるけれど、それでもしっかり手は繋がれていた。
いつかこんなに周りを気にせずとも大っぴらに話せるようになるんだろうか。
考え方が随分と変わったものだなと自嘲しながら、私は繋いでいない方の手でバッグから巾着を取り出した。
プライベートの時はと言われていたけれど、漣からもらった指輪を私はその巾着に入れていつも持ち歩いている。
私にとってこれは、漣との絆を感じられる御守りで、常に側に感じておきたいのだ。
繋いだ手をそっと離し、巾着から取り出して指を通す。漣は意外そうに眺めていたけれど、嬉しそうにも笑った。
『ありがとう』
小声過ぎて口パクに見えるその言葉に、私は頬に熱を感じながら照れつつも笑顔を返した。