あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
そうしているうちにようやく自宅マンションに到着する。エントランスまで数メートルのところで降ろしてもらうと、漣に手を引かれた。
何事もなく無事に自宅に着いた事に安堵し、エントランスのキーを開ける漣の隣に立っていると——突然、声がかけられた。
「し…白雪ちゃん!」
声と同時に死角から飛び出してきた男に腕が掴まれ、恐怖で身をすくませた。
振り払おうとするも震えが勝り、思うように動く事も声を上げる事も出来なかった。
…目の前に見える、鈍い色を放つものを目にしていたから。
「…!白雪ッ」
漣も咄嗟に反応はしたが、男は手を伸ばした漣を容赦なく切りつけた。
「——っ…!」
漣の腕を抉った刃先が赤い筋を作る。痛みに顔を歪める漣に、私は声を上げる事も叶わなかった。
ポタポタと肌を伝い指先から落ちる赤黒い液体に、私は恐怖と絶望で体を震わせていた。