あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
「ようやく熱愛報道がデマだって分かったのに、まさか結婚相手がいるなんて…う、裏切られた気分だったよ…!」
刃先が頬に食い込み、鈍い痛みが走る。顔に傷をつけられているというのに、逃げる事も、声を上げる事も出来なかった。
目尻から耐えられなくなった涙が落ちる。
——助けて、漣…!
そう願った時、パトカーのサイレン音が聞こえた。
「!」
それは一瞬だった。
目を見開くと同時に頬に当てられていた刃が離れ、瞬きの間に鈴木は組み敷かれていた。
「…調子に乗んなよ、クソ野郎…!」
漣は刃物を持った腕を掴みながら鈴木の喉元と胸に脚を置き、全体重を乗せながら凶器を奪い取った。
漣の腕から流れる赤い血が鈴木の顔に落ち、男の顔色は恐怖に色を染め悲鳴を上げた。
ど素人が、そう罵った漣は私に視線を向けた。
「白雪、中に入ってろ」
「で、でも、」
足がすくんで戸惑う私に、漣は安心させるかのように笑いかける。