あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
そう言い何かを書き込む姿をただ眺める。そして最後にと前置きし、警官は続けた。
「加害者は威嚇のつもりで貴方に刃物を向けたと供述していますが…それは虚言である、という事ですね」
その言葉に口角を上げ、迷いなく「はい」と答えた。
「当然です。…じゃなきゃ、こんなにざっくりやられませんよ」
包帯で何重にも巻かれた腕を差し出す。側に立っていた看護師の顔が不憫そうに歪み、それがうまい具合に後押しになったのか警官は分かりましたと答えた。
——ああ…本当に、忌々しい
言葉にはしなかったが、胸の内の激しい怒りの矛先を持て余していた。
あの男が動揺して白雪に傷をつけるとは思わなかった。気の弱そうな男だったし、刃物の扱いが明らかに素人だった。差し詰め白雪を脅して別れるように言質を取る、その程度の目論見だったのだろう。
ならば一回ざっくりいっておけば怖気付くと踏んだのだが、予想外の流血に動揺してヤケになったと、そんなところだろう。
それについては完全に俺の落ち度だ。だが、俺の白雪を不安にさせ、あまつさえ傷を負わせたなど絶対に許せない。
ただのストーカーで終わらせてなるものかと自ら傷を負いにいったが、こんなことならばどさくさに紛れて腹に突き立てて、穴でも開けておけば良かった。
そうすれば、二度と塀の向こうから出てこれないようにしてやれたのに。