あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
「何お前、同業者の顔も覚えてなかったの?」
「違うよ、だってその人ホントに、マジでカッコよかったんだって。並の役者じゃ敵わないくらい輝いてたんだって」
「へー」
あ、時間だ、と毎日決まった時間にプロテインを摂取する那由多は手にしていたハンドクリップを置き興味なさげにシェイカー片手に去っていった。
そんな彼の背を見ながら萌葉はむくれたように言う。
「あれ絶対信じてないよね。私嘘ついてないのに」
そうして視線を私へと流す。
「めっちゃ恥ずかしくない?まあその人笑って許してくれたけど、顔から火吹くかと思ったよ」
「確かに…それは恥ずかしいね」
おそらくだが、萌葉の言うその人は霜月さんだ。あんな役者顔負けにする程の麗しいスタイリストがそう何人も居たらたまったものじゃない。
そういえば私も初対面ではモデルって間違えたな…。まあ、あの時は2人きりだったし、半分当たってたからそれほど恥はかかなかったけど。
そう思っていると萌葉は声を落とし、手招きして顔を寄せろと言ってきた。
「でね、これは大っきい声では言えないんだけど。その映画の主役ってアイドルの子なんだけどね、早速その人にアプローチかけてしっかりお持ち帰りされてたの!」
「……」
「裏で2人でこそこそ会ってさ。私がまだ無名だからって油断したんだね。ねえねえ、これスキャンダルにならない?こういうのあるからこの業界って楽しいよね」