あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
「で、頼み事って何」
「ああ、うん。知り合いのスタッフさんがね…」
一通り事情を話すとそういうこと、と那由多は笑う。
「それくらいならお安い御用。予備にもらった映画のパンフにサイン書いて今度渡すよ」
「ありがとう」
「那由多って意外と子どもに人気あるよね。口悪いのに」
「意外は余計だ。子どもは純粋だから俺の綺麗な心が見抜けるんだろ」
「綺麗な心!ウケる!」
酔っ払った萌葉は背中を逸らしながら大袈裟に笑う。出来上がってるなあと思いながら卵焼きに手を伸ばしていると、萌葉がまあでも、と続けた。
「冗談抜きで、特撮出身ってかなりアドバンテージだよね。放送も1年は確実だし映画もある。何より子どもだけじゃなくて親も流れで観るから広い世代に認知されやすい」
「確かにイベントとかでも子どもより親が盛り上がってる家族もいたな…。あとアフレコするからゲスト声優で呼ばれた時にも役に立つし。場合によるけどアクションもさせてもらたりもするから、色んな経験が積めて有難いよな」
「男子は特に、特撮は俳優の登竜門的なイメージ強いよね」
「歴史があるからな」
「だよね〜。そういう肩書きが無いと認知されるのってほんと難しい。私もモデルとしてSNSは発信してるけど、それくらいしかないしなあ」
そう言って萌葉は「そうだ」とスマホを取り出した。