あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
なんとか気持ちを切り替えて着替えとメイク直しを済ませてセットへ戻る。
ちらりと見やれば美李亜は共演者の男性に愛想を振り撒いていた。次のシーンは彼女の居ない場らしいと内心安堵しながら台本と照らし合わせ声がかけられるままに赴く。
セットの教卓の前には人気女優、その対面に並べられた生徒用の机の指定された場所に腰をかける。
令嬢達の通う女子校ともあって、制服の素材も良いものだし当然生徒役は女ばかり。共学育ちの私にとっては異様な光景だなと思いながら自分の台詞まで流れを見守る。
そして遂にひとこと。
「『教師風情が、偉そうに私に口出ししないでくれる?』」
財閥令嬢であるが故のプライドと校内のカーストトップであり続ける圧倒的な自信とカリスマ性。このドラマにおいて最初に"私"という存在感をひけらかす為の最も重要な台詞。
何度も表情の作り方から言い方まで練習した。演技指導も受けた。ただの生意気な小娘になってもいけない、気の強いだけのお嬢様でもいけない。
"秘密"を抱えるクラスの精神的な柱であり物語の鍵を握る重要人物。
この一言が、今後の役の印象を左右する。
それだけの重みを熟知した上で、言い放った。
幸いそれは功を奏し、カットがかかることなく採用された。