この恋、温め直しますか? ~鉄仮面ドクターの愛は不器用で重い~
「弟は三浪で医学部に入ったのでまだ学生なんです。びっくりするくらいのんきな子なのでドクターとしてやっていけるのか今から心配で」

 意図したわけではないけれど、今日は互いに仕事の話題は出さなかった。

企画展をのんびりと観て回り、併設のカフェでコーヒーを飲む。環はブラックで彼はミルクたっぷり。

「夕食はヘリに乗る前に済ませようと思う。この店でいいか?」

 彼が見せるスマホの画面に映っているのはカウンターで食べるようなきちんとした天ぷらの専門店。

「わぁ、おいしそう!」

 この店も例のドクターのオススメなのだろうか。口には出さなかった環の問いを察したのか、高史郎がつけ加える。

「この店は俺の行きつけだ。女性が好むような華はないが味は保証する」
「楽しみです!」

 カフェを出る前にお手洗いに行こうと思って席を立つ。お手洗いはカフェの店内にはなく美術館と共有のようだ。

「すぐに戻りますね」
「ゆっくりで構わないよ」

 そんなやり取りをしてから環はカフェを出た。

美術館の細長い廊下を歩いていると、向かい側からやってきた女性が不躾なほどにまじまじと環を見つめてくる。

(え、顔になにかついてるのかな?)
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