恋人同盟〜モテる二人のこじらせ恋愛事情〜【書籍化】
病院での診察も終わり、そのままタクシーで自宅に帰る。
ギプスは外れてサポーターだけになった為、動きやすくなった。

「やっぱり自分の部屋は落ち着くな。ホテルに比べたら質素だけどね」

ふふっと笑ってから紅茶を淹れてソファに座る。
会社のパソコンを取り出して、やり残してある作業に取りかかった。

弦との共有フォルダに入っているファイルを開くと、やりかけの状態になっているのに気づく。

(これって、このまま氷室くんが作業するつもりなのかな?私で良ければ代わるけど……)

うーん、と少し迷ってから、めぐは電話をかけてみることにした。

「もしもし、氷室くん?」
『めぐ?もうマンションに帰ったのか?足の具合は?病院ではなんて言われた?』

矢継ぎ早に質問されて、めぐは苦笑いを浮かべる。

「大丈夫だよ。順調に回復してギプスも取れたから。今はサポーターをつけてて、無茶しなければ普通に歩いて構わないって。来週からは仕事に行くね」
『そうか、無理しなくていいからな』
「うん、ありがとう。それで今、氷室くんがやりかけてるファイルを開いてるんだけど。これって残りは私がやっても構わない?」
『あー、えっと、クリスマスイベントの紹介原稿?締め切りまでまだ時間あるから、後回しにしてたんだけど』
「そっか。私、時間持て余してるからやっておくね。出来上がったら調整をお願いしていいかな?」
『ああ、分かった。無理しなくていいからな』

そればっかり、とめぐは思わず笑みをもらす。

『めぐ、環奈が仕事終わったらそっちに寄るって言ってる。何か欲しいものあるか?って』
「ええ?そんな、気を遣わなくていいよって言っておいて。お仕事のあとに寄るなんて疲れるでしょ?って」
『うん、まあ、一応伝える』
「じゃあね、氷室くん。何かあったら連絡ください」
『分かった。くれぐれも気をつけてな、めぐ』

電話を切ると、「なんだかみんな大げさだな」とひとりごちる。
だが、弦と普通に会話出来たことは嬉しかった。
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