鉄仮面の自衛官ドクターは男嫌いの契約妻にだけ激甘になる【自衛官シリーズ】
「だから苦しい過去を振り返っても、そこに囚われずに前に進めるんだと思います。誰にでもできることじゃありません」

 私はできなかった。苦しい過去から逃れるために、前へ進むことをやめて逃げてしまった。

「俺でなければ救えたかもしれない命があったかもしれない。それでも俺は、このまま自分の道を進んでいいと思うか?」

「はい」

 深くうなずいて、悠生さんの問いに答える。

「悠生さんだからこそ救えた命もあるはずですから」

 悠生さんは私を見つめたまま、しばらく黙っていた。

「やっぱり君はポジティブでいいな」

 長い沈黙の後、彼が静かに言う。

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