鉄仮面の自衛官ドクターは男嫌いの契約妻にだけ激甘になる【自衛官シリーズ】
 思わずその名前を口にしていた。届かせるつもりのなかった独り言だというのに、名前を呼ばれた律が決意に満ちた眼差しで俺を見つめ、深くうなずく。

「どうして君がここにいるんだ」

「力になりたくて」

 律の答えはあまりにも単純明快だった。

「だが、ここには――」

「誰か、手を貸してください!」

 俺が質問を続ける前に、悲鳴にも似た男の声があがる。すぐに気持ちを切り替えて事態を把握しようとするが、その前に律が動いていた。

「どうかしましたか?」

 よく通る声で言うと、律は声をあげた男のもとへ迷いなく駆けていく。視線を追うと、出血した腹部を押さえている患者もまた男だった。

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