憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
眼鏡の向こうから期待を込めたキラキラした目で課長が私を見つめ、自分の名を呼ばれるのを待っている。
おかげでただ名を呼べばいいだけなのに、気恥ずかしくなってきた。

「りゅ、りゅう、……じ……さん」

そのせいで言葉は尻すぼみになって消えていき、火を噴きそうなほど熱い顔で俯いていた。
――なのに。

「聞こえないなー」

わざとらしく課長がため息をつく。

「ほら。
もう一度、言ってみろ」

軽く握った拳に私の顎をのせ、彼が無理矢理顔を上げさせる。
眼鏡越しに視線のあった目は愉悦を含んで光っていて、その妖艶な瞳に見つめられて目は逸らせなくなってしまう。

「ほら」

いつまでも言わない私に彼が促してくる。
震える唇を開き、彼の名を紡いだ。

「……りゅ、りゅう……じ、さん」

「聞こえない」

私はこれで精一杯だというのに、彼は許してくれない。
名前を呼ぶだけなんて簡単だと侮っていた自分を叱り飛ばしたい気分だ。

「ほら、ちゃんと言え」

「……りゅう、じ、さん」

「〝さん〟はいらない。
呼び捨て」

これで許してくれるだろうと思ったのに、彼はハードルをガン!と上げてきた。
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