憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
じろりと専務は、私を睨め上げた。
その隣でルナさんは嬉しそうににたにたとイヤラしく笑っている。
なにも言えなくて、俯いて唇を硬く噛んだ。

確かに龍志はルナさんと婚約している。
しかし、結婚する気はないときっぱりと言い切ったと言っていた。
それを本人の意思に関係なく、勝手に勧めようとしているのはルナさんと彼の父親だ。

だいたい、それこそ男女の問題を仕事に持ち出してくるなどルナさんはなにを考えているのだろう?
あれか、自分のものだと思っている龍志に手を出されて、腹を立てているのか。
龍志はものじゃないし、自分の意思だってある。
それを好き勝ってしようとしているルナさんと父親に段々と腹が立ってきた。

しかし、私がここでなにか言っても〝婚約者のいる男を奪った女〟としてなにも聞いてもらえないだろう。
どう言えば上手く事態を解決できるのか頭を働かせる。

「ねえ。
なに黙ってるの?」

私がなかなか口を開かないからか、ルナさんが苛立った声を上げる。

「言われるとおりだから、なにも言えないんでしょ。
この、泥棒猫」

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