憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
それで小さい頃からいつも、兄貴と比べられた」

もう習慣のように繋いでいる彼の手に、ぎゅっと力が入る。
龍志の性格からいってそれは、とても苦痛だったんじゃないだろうか。

「兄貴はあの親父の息子と思えないほど優しくて、今でも慕ってる。
跡を継ぐのは絶対俺だとお袋が息巻いてても、龍志が継げばいいよと困ったように笑ってるような人なんだ」

〝あの父親〟という龍志の声には険がある。
どういう人かは知らないが、勝手にルナさんとの結婚を進めたり、私もいい印象はない。
反対にお兄さんの話をするときの彼の声は穏やかで、それだけ尊敬しているのだと思わせた。

「当然、先妻の親族や宇佐神家の人間には長男が継ぐべきだって人間がいる。
兄貴はそんな人間とのあいだに挟まれて、いつもつらそうだった」

龍志の声に苦悩の色が混ざる。
思わず顔を見たけれど真っ直ぐに天井を見上げているばかりで、薄暗い中ではその表情まではっきりとわからなかった。

「俺は兄貴が好きだからさ、兄貴を困らせるくらいなら家を出ようって決めたんだ。
俺には家を継ぎたいとかいう気持ちもないからな。
それどころか、親父からあれこれと指図されるのが鬱陶しいと思ってた」

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