憧れの上司は実は猫かぶり!?~ウブな部下は俺様御曹司に溺愛される~
「あっ、はい!」

スーツケースを勢いよく閉め、龍志に返事をした。

龍志の運転で出発する。

「暑いとか寒いとかあったら言ってくれ」

彼の手が空調を調整する。

「ありがとうございます」

そういう気遣いが嬉しい。
とはいえ、今まで暑いだとか寒いだとか、彼の車で感じたことはないのだけれど。

今日の目的地は高速を使って三時間ほど行ったところにある、温泉地だ。
温泉地といってもリゾート化されていて、観光客相手の店が軒を連ねる。
しかし街の喧噪から少し離れると大人の隠れ家的宿や美術館が点在する、そんなところだ。

龍志はこまめにサービスエリアやなんかに寄ってくれた。
私がトイレに行きたいなどお願いしないでいいように配慮してくれたのかもしれない。
そんな気遣いが助かる。

渋滞に嵌まることなく順調に進み、予定の時間よりも少し早く目的地に近づいた。

「早いけど昼メシにするか」

龍志が提案してくれる。

「あー……。
あまりお腹、空いてないんですよね」

しかしそれに、曖昧な笑顔で答えた。
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