婚約者に悪役令嬢になってほしいと言われたので
外からの日差しを受けて輝く銀髪に鳶色の瞳。乗馬なども嗜むので見苦しくない程度に日に焼けており、体格もいい。端正な男性らしい顔立ちも紳士的な振る舞いも流石王族だと誰の目から見ても感心するだろうに。
(「性格がなぁ………」)
王族として生まれた自覚がありすぎてクッソ真面目というかなんというか。いや真面目なだけじゃなくてちょっと捻くれているところもあるんだけど、それも真面目に捻くれているから倍に面倒というか。真剣に腹芸ができるのよねぇ。
まぁわたしが言ったところで最初から完成されていた性格だったのでもはやそういうものだと理解して納得したほうが早い。幸いわたしは気にしない質だし。
準備が整ったのかあの唐突な台詞の意図を説明してくれたところによると。
近年の悪役令嬢ブームに伴って真実の愛(笑)などと宣って婚約破棄されるという事案が隣国も含めて何件か見られているらしい。それだけならば別段、その婚約破棄などを行ったものが愚かなだけだったという話で終わるのだが、その婚約破棄をした者達には共通点があった。
そして王家でも秘密裏に調べたところによると違法な薬物が関わっているのだとか。それも精神に作用するタイプの危ない薬の存在が明らかになったらしい。
それをこんな学園の生徒会室で話すのはどうなんだと思ったが「問題ない。音が漏れないように手は打ってある」とのこと。なんともまぁ手際のいい婚約者である。
詳しく調べてみると黒幕とは言えないものの関連していそうな家に目星が着いたため、そこから繋がりを辿って犯人逮捕としていきたいが、問題はその手段。
相手はやっと尻尾を掴めたというような難敵であり、これを逃したらまた一から捜査をやり直さなければならないので、国としてもこの機会は逃したくない。
「そこで君だ」
「………はい?」