あきれるくらいそばにいて

「な、何だね、、、白崎くん。」
「小浦部長。これから、病気と闘いに行く女性にかける最初の言葉がそれですか?」

未来の言葉にフロア全体が静まり返る。

小浦部長は、未来の言葉に苛ついたのか、「お前は誰にそんな口をきいてるんだ!」と大声を上げた。

「僕は部長と主任の関係を抜きにして、一人の人間として言わせていただきます。小浦部長は、どうしてこれから病気と闘いに行く星野さんに"仕事のことは気にしなくて良いから、自分の身体を第一に考えなさい"と言えないんですか?小浦部長には、人の心が無いんですか?それに"女じゃなくなる"って、、、どう考えたら、そんな言葉が言えるんですか?女性にとって、残酷な病気なのが分からないんですか?」

未来の言葉に圧倒され、正論を並べられて何も言い返せずにいる小浦部長。

小浦部長は悔しそうな表情を浮かべながら、未来を睨みつけていた。

「小浦部長。社長が愛妻家なのはご存じですか?僕が以前在籍していた支店に居た時、社長とお話する機会がありました。社長は、結婚してすぐに奥様が子宮癌になってしまい、子どもを望めない身体になってしまったそうです。その時に奥様は、社長に何度もごめんなさい、と謝ったそうです。でも、社長は言っていました。"妻には、君が生きていてくれればそれでいいと言ったんだ"と。だから、もし女性社員に奥様と同じ病気の人が出たら、仕事の心配はさせず、命を第一に、自分の身体を第一に考えて、ゆっくり休んできなさいと伝えてあげなさいと教わりました。」

未来は、真っ直ぐな言葉で小浦部長にそう言うと、小浦部長は「やばい」とでも言いたそうな表情を浮かべた。

「もし、さっき小浦部長が星野さんに言った言葉を社長に報告したら、、、社長はどう思うでしょうね。有り難いことに、僕は社長に可愛がっていただいてるんですよ。」
「白崎くん!さっきのことは、社長には、、、!」
「じゃあ、、、星野さんに謝罪してください。小浦部長は、人として最低なことを言ったと、僕は思います。」

未来がそう言うと、小浦部長はその場に立ち上がると、渋々頭を下げ「星野くん、、、申し訳なかった。」と謝罪してくれたのだった。

< 38 / 55 >

この作品をシェア

pagetop