同期の姫は、あなどれない
 ―――チャンスがあったら樹に聞いてみて?あいつ素直じゃないからさ。

 「何?聞きたいことって」

 正面から見据える目に僅かに不服の色を感じ取って、少しだけ怯みつつも私は口を開く。

 「何で、私にミモザのお酒を勧めてくれたの?」


 『樹にミモザを勧めた理由を聞いてみて。それが答えだから』


 姫を追いかける直前に悟さんに耳打ちされたのはこのことだった。
 私の疑問に意表を突かれたようで、姫は一瞬言葉を失った後地を這うような溜息をついた。

 「……今、それ聞く?」

 「えっと……だめだった?」

 このタイミングで聞くことではないかもしれないけれど、今しかないような気もした。
 呆れられたかな?と様子を伺うと「ったくあの人は…」とぶつぶつ毒づいてから、観念したように無造作に髪を掻き上げた。

 「ミモザの花が、ヨーロッパでは人に贈られる花って知ってる?」

 それは、聞いたことがある。
 確かミモザの日というのがあって、大切な人に贈って日ごろの感謝を伝える日があるって。

 「そう、特に男性から女性に贈られることが多くて。まぁ、つまり…そういうこと」

 「そ、そういうことって?」

 「あとは自分で考えて」

 さらに言い連ねようとするのを、もうおしまいと制されて、姫の指先が、つ、と私の頬をなぞる。
 それがさっき一度触れたときとは違う意味が込められていることが伝わって、頬全体に一気に熱が集まった。

 「……いい?」

 問われて、私は頷く代わりに目を伏せる。

 ミモザの花言葉の一つが『秘めた恋』であることを私が知るのは、もう少し後のことだ。

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