同期の姫は、あなどれない
夜は続く
 姫は私の背中と膝を簡単にかかえて抱き上げた。いわゆるお姫様抱っこだ。

 「じ、自分で歩けるってば…っ、」

 「知ってる。俺がしたいだけ」

 したいからしてるだけ、そう言われてしまうと何も言えなくなる。
 結局そのままベッドまで運ばれると、向かい合う形でそっと下ろされた。その注意深さに、自分が壊れ物になったかのように錯覚する。

 「あっつ…、」

 姫は着ていたシャツの裾をたくし上げて一気に脱ぎ捨てた。
 迷いのない手つきと露わになった上半身が、どこかふわふわした心地の私にこれから起こる現実を突きつけているようで、喉が震える。

 脱いだ拍子に乱れた髪が気になるのか軽く頭を振る仕草が、無意識なんだろうけれど扇情的だった。

 「顔、上げて?」

 目のやり場に困って知らずに俯いていた私の顔を、姫は少し下から覗き込む。
 
 顎に指先が掛かって、唇を塞がれる。
 下から何度も啄むように吸われて、耐えきれなくなったところで舌がするりと入り込んできた。
 口内をゆっくり撫でられ舌を吸われるたび、体の奥が痺れて熱くなっていく。

 「ふぁ、…んっ、」

 キスの合間に、姫の手が私の着ているシャツにかかる。下着ごと頭から脱いでしまうと、後頭部に回った手に引き寄せられて耳元に熱い息がかかった。

 「普段分かんなかったけど、結構あるんだな」

 耳に吹き込まれるように囁かれて頭がぼうっとする。

 「……な、何が?」

 「胸」

 ちょうど胸元へ移動してきた手で確かめるように撫で上げられて、突然の刺激に思わず声が漏れる。

 「っ…、そういうのは心の中に留めておいてっ、、!」

 姫の体に見惚れていた自分のことは棚に上げて睨む。
 姫はごめん、と軽くキスを落としながらも、胸への愛撫は止まない。何度も柔らかく揉み込まれ身を捩ると、隙ができたとばかりに首筋に吸い付かれた。

 舌と指先の感触に翻弄されて体が無意識に震えてしまう。
 少しずつ前のめりになる姫の体の重みを支えきれなくなって、とうとう私はそのままベッドの上に倒れ込んだ。

 
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