同期の姫は、あなどれない
 ◇◇◇◇
 
 「…あのさ、そろそろ起きない?」

 「だめ、あと少し」

 「えぇー……」

 もぞもぞと布団から出ようとすると、中から伸びてきた腕に引っ張られて、私の体はまたベッドへと沈む。もう何回目のやりとりだろう。

 特に何をするというわけでもなく、髪を撫でられたり、たまに毛先を指に巻き付けてはくるくると解いてみたり。そうされているうちに私もウトウトとしてまた目を開けて、というようなことをさっきから繰り返している。

 「そろそろ起きて、いったん帰りたいんだけどなぁ」

 「何で?」

 「だって着替えとか、持ってないし…」

 あぁそっか、と今やっと思い出したみたいな顔をするけれど、状況が変わる気配はない。私は仕方なく、体勢を変えながら落ち着きの良い居場所を探す。

 私の動きが寒さからくると思ったのか、姫が布団を手繰り寄せて背中からふわりと掛けてくれる。
 私は、ちょうど掛けられた布団を自分側に抱き込むようにして掴んだ。あぁ、これが一番落ち着くかも。

 「…ゆきのってさ、クッションとか抱き枕がないと寝られないタイプ?」

 「え、何で分かったの?」

 確かに小さい頃からベッドの周りにはぬいぐるみを置いて、毎晩お気に入りの子を抱きしめながらじゃないと寝られなかった。今はもうぬいぐるみではないけれど、大きめのクッションを抱き枕がわりにして寝ている。とにかく何かを掴んでいないと落ち着かないのだ。

 「夜中寝てるときずっと抱き着いたまま離れないから、もしかしてそうかなと思って」

 「……うそ、一晩中?」

 何それ、そんなの知らない。
 動揺して固まった私を見て、姫の口元がおかしそうに微笑む。言葉は出さずともこれは肯定だ。

 
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