同期の姫は、あなどれない
 そうなると、今もたまに触れる素肌の感触だとかいろいろ再認識させられて、とりあえず私は顔を見られたくなくて布団を頭から被って潜り込んだ。

 「いつまでそうしてんの?」

 長いか短いか分からない程度の間そうしていると、上から宥めるようにぽんぽんと叩かれる。

 「……子どもっぽいって思った?」

 抱き枕がないと寝られないことも、こんなふうに隠れることも。

 「いや?可愛い思うけど」

 あぁそうだ、朝の姫は心臓に悪かったんだった。
 事も無げに言われると、何だか意地を張って隠れているのもばかばかしくなってきて、のそのそと布団から顔だけ覗かせると、姫は穏やかに微笑んでいる。

 「出てくる気になった?」

 「……このまま起きるなら、出る」

 閉じたカーテンの隙間から覗く太陽は、最初に目が覚めたときより随分高い位置にある。こうやってごろごろしているのは好きだけれど、本当にそれだけで終わってしまいそうだ。

 「分かった、じゃあ起きるか」

 交換条件成立。
 そうして私たちはようやくベッドから抜け出した。

 「もうこんな時間だったのか」

 先にベッドを出た姫の言葉にふと時計を見ると、もう10時半を軽く回ってもうすぐ11時になろうとしている。普段の休日でもここまで寝坊することはあまりない。
 目が覚めてから、いったいどれぐらいの間まどろんでいたんだろうかとおかしくなった。

 「家って吉祥寺だよな。着替えに帰ってから、昼どこかで食べる?」

 「うん、そうしよっか?」

 私は散らばった服を手繰り寄せて手早く着ると、ベッドから立ち上がる。

 「あとどこか行きたいところある?」

 「行きたいところ…あ、昨日姫が言ってたドライヤー見に行くのは?」

 「俺はいいけど、そんなのでいいの?」

 私の提案が予想外だったのか、姫も服を着ながら少し驚いた顔で振り返った。

 「うん、私家電見るの好きなんだ。パンフレットを持ち帰って見比べるのも好きだよ」

 「初耳、知らなかった」

 そう言われると、今まで誰にも言ったことはなかったかもしれない。駅の近くに大きい量販店があるからそこに見に行っていいかと尋ねると、ゆきのにまかせると返ってきた。

 「結構何でも揃ってるんだな」

 「姫は大学もこっちの方だからあんまり行くことないよね。あ、じゃあ姫がどこか行きたいところとかある?案内するよ」

 私は実家にいたころから、友達と遊ぶのも買い物するのもまずは吉祥寺だったから、大体の地理は把握しているしお店にも詳しい方だと思う。
 私の言葉にしばらく悩む素振りのあと、姫は思いついたように

 「じゃあ、ゆきのの部屋に行きたい」

 と言った。

 
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