同期の姫は、あなどれない
 私は目線はテレビに向けたまま、ポップコーンを摘んで口に運ぶ。
 久しぶりに食べたけど美味しい。一つ食べるともっと食べたくなって、さらにもう一つと、伸ばす手が止まらなくなる。

 「久しぶりに食うと美味いな」

 「私もおんなじこと思ってた。でもあんまり食べ過ぎると太りそう…」

 「もう少し太ってもいいくらいだろ。それにそんなにカロリー無さそうだけど」

 ほら、と口元に持ってこられて反射的に口を開けてしまう。もぐもぐと咀嚼をして飲み込むと、また次のポップコーンが押し当てられる。何だか、親鳥に餌付けされているヒナになった気分だ。

 「…ちょっと面白がってない?」

 隣りに座る姫を横目で見やる。
 テレビ画面を見たままの横顔は、照明を落としているせいで映像の光に照らされて陰影ができている。

 綺麗だな、なんて見惚れていると少しだけ悪戯心が湧いてきた。
 私もお返しとばかりに、一つ摘んだポップコーンを姫の口元に押し当てるとーー指ごと軽く食まれて、思わず声が出た。
 引こうとしたものの手首を掴まれて、指先をちろっと舐められる。その瞬間音を立てたのは、絶対にわざとだ。

 「もう終わり?」

 「~~~っ!」

 最近知ったことだけれど、姫はときどきこうやって慌てる私を見て面白がるところがある。今だって、澄ましていても少しだけ眉が下がっている。これは笑いを堪えている顔だ。

 「もう知らないっ」

 私もやめておけばいいのに、たまに自分から仕掛けては結局やり込められてしまう。悔し紛れに、私はぷいっと横を向いた。

 「字幕なんだから、画面見てないと話分かんなくなるぞ」

 誰のせいで、という言葉は、頭を引き寄せられたせいで行き場を失った。

 そのまま姫の肩にもたれかかるようになる。
 すぐに離れるつもりだったのに、この体勢が思いのほか心地良くて、もう動きたくなくなってしまった。

 「食べる?」

 「……食べる」

 今日も私の完敗だ。
 差し出されたポップコーンに、私は口を開けてありがたく享受する。

 汗をかき始めたグラスの中の氷が、からんと小さく崩れる音がした。


 
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