同期の姫は、あなどれない
 「したくなった?結婚式」

 「え…わ、私?」

 不意に話をふられて、私は顔を上げる。
 ついさっきまで泣いていたせいか、頭がよく回っていない。少しの間考えていると、姫が先に口を開いた。

 「結婚式って、何でするのか意味が分からなかったけど。意外といいものなんだなと思った……誰かさんのドレス姿も見てみたくなったし」

 「……そ、それって私の?」

 あまりにも驚きすぎて、こんな言葉しか出てこない。

 「他に誰がいるんだよ」

 一方の姫はいつもより口角が上がっていて、いつもよりだいぶ饒舌だ。お祝いの席特有の、祝福に満ちた空気がそうさせるのかもしれない。

 こんな姫を隣りで見られるのなら、したい。
 そう答えたら笑うだろうか、それとも照れるだろうか?

 聞いて見たい気もするけれど、まだもうしばらく自分の胸にしまっておくことにする。

 「そうは言っても俺は式に呼べるようなやつほとんどいないから、ここまでのは無理そうだけど」

 「私も、もう少しこじんまりしててもいいかも…?でもこうやって外でできるのって素敵だね」

 そんなことを話していると、女性スタッフからグラスの乗ったトレイが差し出される。
 私はトレイの中にミモザを見つけてそのグラスを、姫はシャンパンを受け取ると、それぞれのお酒に合うおすすめのオードブルや料理を教えてくれた。
 給仕を行うスタッフも、行き届いたきめ細やかなサービスの一方であまり仰々しくなくて、良い意味でカジュアルだった。

 「どうもー、何だか楽しそうに話してるねえ」

 にこにこと話しかけてきたのは、新郎の悟さんだ。トレイからシャンパンを受け取ると、あー喉乾いた、と一気に飲み干してしまう。

 「兄貴の交友関係の広さは異常って話。主役が一人で油売ってていいわけ?」

 「女子同士で撮りたいからって、俺はずっとカメラマン役だったよ。で、まだ話し足りないっていうから俺だけ抜けてきた」

 俺も主役のはずなんだけど、と肩を竦めながらボヤいてはいるものの、その顔はとっても幸せそうだ。

 
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