同期の姫は、あなどれない
 「そういえば、父さんがさっきからお前に声掛けたがってたぞ。今もちらちらこっち見てる」

 悟さんが指し示す先には、ブラックのモーニングを来たグレイヘアの男性が立っている。あの人がそうだろうか。
 気になって見ていると、隣りに立つ男性と会話を交わしながら一瞬こちらに視線が来て、またすぐ手元の席次表に目を落とす…を繰り返していた。

 「はぁ、めんどくさ…」

 「そう言うなって。ゆきのちゃんも一緒に行く?」

 突然水を向けられて、私は狼狽える。
 2人のお父さんってことは、つまり上総ホールディングスの社長さんってことだよね?

 「あの、私なんかが一緒に行って大丈夫なんですか?」

 いや、むしろ何かひと言ご挨拶をしておくべきなのだろうか。
 でも、当たり前だけど手土産的なものも持っていないし、今日は仕事じゃないから名刺も持っていない。

 突然の展開についていけず、思考がまとまらないままショートしそうだ。
 そんな不穏な様子に気がついた姫が、やれやれといった感じで私の頭にぽんっと手を置く。

 「そんなに緊張しなくても平気だから。30年後の兄貴だと思えばいいよ」

 「ちょっと、さすがにそれは語弊ありすぎない?」

 「ほっといたら2人で永遠と喋り続けるだろ。そうなったら途中で切り上げるからな」

 ……どういうお父さんか謎が深まるけれど、どうやらあまり怖い人ではなさそうで、少しだけホッとする。


 
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