同期の姫は、あなどれない
 「ちょうど朝ごはんできたけど食べる?」

 「えっ、あ、ありがとう、、じゃなくてっ、ごめん、もしかして私、昨日あのままここで寝た……?」

 記憶を遡っても、どうやってこのベッドまで辿り着いたのか思い出せなくて、おそるおそる尋ねる。

 「あぁ、昨日俺が兄貴の電話に出たのは覚えてる?それが終わって戻ってきたら、そこのテーブルに突っ伏して寝てた。何回か起こしたんだけど全然起きないし、とりあえずこっちに移動させた」

 やっぱり昨日飲み過ぎだったんじゃねぇの?と言って軽く笑う。
 よかった、勝手に人様のベッドにダイブしたわけではなさそうで、ひとまず安心する。

 でも、そうなると姫はどこで寝たんだろう?
 ストレートに聞くのが躊躇われてあれこれ考えていると、私の言いたいことを察した姫が「心配しなくても俺はそっちのソファーで寝た」と言った。
 ほっとしつつも、それはつまり私は家主のベッドを占領したことになるわけで、軽く血の気が引く。あのソファーの大きさだと、姫の身長では窮屈だったに違いない。

 「赤くなったり青くなったり、忙しいやつ」

 あぁ、また笑われた。


 時間は朝8時少し前だった。
 いつまでもこうしているわけにいかないので、私はベッドから出る。シャワーを使ってもいいという申し出は丁重に断って、洗面所を借りて軽く顔を洗った。メイク落としも何も持ってないのでとりあえず洗うだけ。帰ったらちゃんとやろう。

 洗面所を出ると姫はキッチンで朝ごはんの用意をしてくれていた。

 
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