同期の姫は、あなどれない
 「課長、私もやれることがあれば手伝いますよ」

 「早瀬は今忙しいだろ」

 「大丈夫です、最近保守の方が問い合わせも少なくて平和なので」

 四宮課長は少し考えこんでから、机に置かれていた書類の山からホッチキス止めの書類をいくつか抜き出すと私に手渡した。

 「じゃあこの三つの案件の見積りチェックと、ワークフロー申請作業を頼めるか?」

 「はい、分かりました」

 「基本はプロジェクト業務が優先だから、キツくなったら調整するからすぐに言えよ」

 私は書類を受け取って自席に戻る。
 念のためにPCのメールボックスを開き、急ぎの問い合わせが届いていないことを確認してから、見積書のチェックを進めた。

 一つ目のチェックを問題なく終えて二つ目に取り掛かると、ところどころマニュアル通りに計算しても数字が合わない箇所があった。私は赤で訂正を入れ終えてから、見積書の作成者である一課の宮浦さんの元へ修正依頼をしに行くために立ち上がった。

 「あ、宮浦さん!」

 一課の島は、私たち三課とは反対側で少し離れている。
 オフィス内の通路を歩いている途中で、ちょうど宮浦さんが今にも外出しそうな雰囲気だったので、私は慌てて呼び止めた。

 「この見積書なんですけど、ここ利益率22%切っちゃってるんで、数字見直してもらってもいいですか?このままだとWFに回せなくなっちゃうので」

 「本当に?でもごめん、もう今すぐ移動しないといけないんだけど」

 宮浦さんは時間を気にするように腕時計を見る。すでにPCも閉じられているので、この場で確認してもらうのは無理そうだ。

 「じゃあ、仮の数字で修正したのをファイル化してメールで送るので、どこかで確認してもらうことってできますか?」

 「うーん、これから定時まで打ち合わせで時間取れないんだよね。早瀬さんの方で修正してフロー回してくれちゃっていいよ!」

 「えっ、それはさすがにちょっとっ、、」

 そう言うと、バタバタと慌ただしくオフィスを出て行ってしまった。

 
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