同期の姫は、あなどれない
 「本日はご来店いただきありがとうございます。お連れ様は初めてでしょうか?」

 「は、はい……」

 「ここ、ドリンクメニューがないんだ。言ったら大抵のものは作ってくれるから好きなの頼んで。俺はいつもので」

 「かしこまりました。お連れ様はいかがいたしましょう?」

 (い、いかがいたしましょうって言われてもっ……)

 メニューがないってどういうこと?値段も分からないし、どんなシステムなの??
 頭の中で軽くパニックを起こしながらも、何とかそれを出さないように精いっぱい表情を引き締める。

 「あまりお酒は強くないので、アルコールは強くなくてできればフルーティーなのを…」

 しどろもどろになりつつ、どうにかオーダーをする。こんな説明でいいのか自信が持てないけれど、スタッフの人は微笑みながらオーダーを書き留めている。

 「かしこまりました。それでは味のベースはどのようにいたしましょう?」

 味のベース?どうやらまだ注文は終わっていなかったらしい。
 私がよっぽど情けない表情をしていたのか、姫は苦笑しておすすめは?と助け舟を出してくれた。

 「そうですね、さっぱりした味がお好みであれば柑橘系、甘めの場合はピーチやパインなどのリキュールもご用意がございます」

 「ミモザとかは?あれなら飲みやすいんじゃない」

 「ミモザ?」

 「オレンジジュースとスパークリングワインを合わせたカクテルです」

 あ、それならさっぱりしてて飲みやすそうだ。
 それに組み合わせを聞く限り、自分の好みに合っているような気がする。

 「そちらをぜひ、お願いします」

 「かしこまりました、少々お待ちくださいませ」

 スタッフの人が下がると、私はどっと疲れて椅子の背もたれに体重を預けた。あぁ、緊張した。

 
< 70 / 126 >

この作品をシェア

pagetop