同期の姫は、あなどれない
 私の態度がよっぽどおかしかったのか、姫は笑いをかみ殺していた。

 「……笑いすぎだよ」

 「悪い、料理の方はちゃんとメニューあるから安心しろ」

 私の抗議の目を察してそう言うけれど、実際はあまり悪いと思っていなさそうなことぐらい、さすがの私でも分かる。
 ふくれっ面で受け取ったメニューを広げると、次は聞いたことのない料理名の洪水に目を回すことになった。今度は早々にSOSを出して、メニューを覗き込む姫からどういった料理なのか教えてもらいつつ、野菜や魚介、お肉などをバランスよく頼むことができた。

 緊張と疲労ですっかり喉が渇いたところに、タイミングよくお酒が運ばれてくる。

 「お待たせいたしました、ミモザでございます。アルコールがあまりお強くないとのことでしたので、スパークリングワインの量を少し控えめにしております」

 私の前に静かにグラスが置かれる。
 鮮やかなオレンジ色と、グラスの中で立ちのぼる炭酸の泡がとても美味しそうだ。

 「姫元様にはこちらを」

 姫の前に置かれたグラスは、ライムが一切れ飾られている以外は色味もとてもシンプルだ。何というカクテルなのだろう。

 「ジンとライムとジンジャーエール、だっけ?名前は、、忘れた」

 「ドラゴンフライと申します。いつまで経っても覚えてくださいませんね?」

 バーテンダーさんはおかしそうに笑って、通常よりジンが多めでジンジャーエールは辛口を使用していることを説明してくれる。

 「それでは、ごゆっくりお寛ぎくださいませ」

 バーテンダーさんが一礼して下がったあと、私たちは目の前に置かれたグラスを手に取った。
 
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