同期の姫は、あなどれない
 それから少しだけ四人で会話をしたあと、悟さんと透子さんは窓際のソファー席へと移動して行った。何でも、二人が来たときは決まって座る席なのだそうだ。

 本当はもう少し悟さんたちに居てほしかったけれど、恋人同士である二人の時間を邪魔するわけにはいかない。
 急に姫と二人になってしまい、どうしようかと内心あたふたしていると、ちょうどよく注文していた料理が運ばれてきた。

 机に並べられた料理は、どれも見た目からとても美味しそうだった。
 取り分けますか?と尋ねてくれたのでお願いすると、店員さんは綺麗に取り分けながら食材やソースについて流れるように説明してくれる。それがいっそう食欲を掻き立てられた。

 出された料理はどれも見た目に違わず美味しくて、ただ飲むついでに食べるといった料理ではなくて、どれも記憶に残る一皿だった。料理を口にすると、料理の感想や使われている珍しい食材のことなど、話したいことが自然と出てくる。

 いつもの私たちのペースを取り戻して、やっぱりさっきの気持ちは錯覚だったのだと私は思い直した。

 (うん、そうだ。やっぱり私たちはこういう関係がいい)

 早鐘のように打つ心臓に戸惑ったり、息苦しくなったり、熱に浮かされたり、そういうのは似合わない。何より、姫のあんな顔をもう見たくない。

 何でもないことを話して、時々笑って。

 それが私たちには合っている。


 
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