同期の姫は、あなどれない
◇◇◇◇
あれは、R&Sソリューションズの内定式の日だ。
会場前で男性社員が手元の名簿をチェックし、もう一人の女性社員から仮の社員証と封筒を手渡された。
「席は名簿順の通りとなっています。必要な書類はすべてこちらに入っておりますので、着席しましたら不足がないかご確認ください」
受付を済ませて会場である大会議室の中へと入ろうとしたとき、受付の二人がひそひそと会話する声が聞こえた。
「先輩、もしかして今の人ですか?この前言ってたあの有名な…」
「あぁ、人事課長から聞いた話だとそうらしいぞ」
「へぇー、何でうちの会社に来たんですかね?」
背後から聞こえる会話の内容は丸聞こえだった。うんざりしつつも、振り返ることなく会場に入る。人事がどう調べたのか知らないがこれくらいは想定していたし、どうせどこの会社に入っても同じことだ。
自分の席に座ると、時間が早いのかまだ人ははまばらだった。
渡された封筒から書類を引き出して、時間をつぶすために見るともなくパラパラとめくる。そのときだった。
「あの、すみません」
初めは、自分に話しかけられていると気づかなかった。
書類から顔を上げると、同じく黒のリクルートスーツを着た女性が立っている。自分の手の中と同じ封筒を抱えているから、社員ではなく内定者だと分かった。
「読んでいるところ邪魔してしまってすみません。私、早瀬ゆきのといいます。今自分の席を探していて、、あの『ひめ』さんで合ってますか?」
「………え?」
突然の問いかけに、俺は面食らった。
それに初対面でも親しい人間にも、そんな呼ばれ方をしたことがない。
「それは、俺のこと?」
周りに他に誰もいないと分かっていても、聞かずにはいられなかった。
あれは、R&Sソリューションズの内定式の日だ。
会場前で男性社員が手元の名簿をチェックし、もう一人の女性社員から仮の社員証と封筒を手渡された。
「席は名簿順の通りとなっています。必要な書類はすべてこちらに入っておりますので、着席しましたら不足がないかご確認ください」
受付を済ませて会場である大会議室の中へと入ろうとしたとき、受付の二人がひそひそと会話する声が聞こえた。
「先輩、もしかして今の人ですか?この前言ってたあの有名な…」
「あぁ、人事課長から聞いた話だとそうらしいぞ」
「へぇー、何でうちの会社に来たんですかね?」
背後から聞こえる会話の内容は丸聞こえだった。うんざりしつつも、振り返ることなく会場に入る。人事がどう調べたのか知らないがこれくらいは想定していたし、どうせどこの会社に入っても同じことだ。
自分の席に座ると、時間が早いのかまだ人ははまばらだった。
渡された封筒から書類を引き出して、時間をつぶすために見るともなくパラパラとめくる。そのときだった。
「あの、すみません」
初めは、自分に話しかけられていると気づかなかった。
書類から顔を上げると、同じく黒のリクルートスーツを着た女性が立っている。自分の手の中と同じ封筒を抱えているから、社員ではなく内定者だと分かった。
「読んでいるところ邪魔してしまってすみません。私、早瀬ゆきのといいます。今自分の席を探していて、、あの『ひめ』さんで合ってますか?」
「………え?」
突然の問いかけに、俺は面食らった。
それに初対面でも親しい人間にも、そんな呼ばれ方をしたことがない。
「それは、俺のこと?」
周りに他に誰もいないと分かっていても、聞かずにはいられなかった。