同期の姫は、あなどれない
「えっと、この席順って五十音順ですか?」
「……たぶん」
「ということは、私の次の『ひめ げんき』さんですよね?」
手元の名簿を見ると、自分の名前である『姫元樹』の一つ上に『早瀬ゆきの』の名前があった。
あぁ、そういうことか。
数秒の逡巡のあとに、俺はようやく彼女が名前を読み間違えていることを理解した。
「合っているけど、ある意味間違っているというか」
「え?」
「苗字は『ひめ』じゃなくて『ひめもと』。名前は『いつき』」
二人の間に沈黙が流れる。
それから自分の思い違いを理解したらしい彼女の瞳がぱっと開いて、口元に手を当てた。
「………あ、」
文字通り人が固まるところも、こんなに顔色が変わっているところを初めて見た気がした。
「ご、ごごごめんなさい!」
彼女はみるみる顔を真っ赤にすると、膝に顔がつきそうなくらいに頭を下げた。
「あの、高校の同級生に『元樹』っていう名前の人がいて、名簿見たときに同じ名前だなって早とちりしちゃって…って言い訳ですよね、本当にごめんなさい…!」
「いや、そこまで別に…」
それよりも、そんなに傾けていると手に持っている封筒の中身が出てしまいそうだな、とそっちの方が気に掛かる。すると、「あっ」と思うより早く、彼女の持つ封筒から中身の書類が滑り落ちて、床にぶちまけられた。
「……たぶん」
「ということは、私の次の『ひめ げんき』さんですよね?」
手元の名簿を見ると、自分の名前である『姫元樹』の一つ上に『早瀬ゆきの』の名前があった。
あぁ、そういうことか。
数秒の逡巡のあとに、俺はようやく彼女が名前を読み間違えていることを理解した。
「合っているけど、ある意味間違っているというか」
「え?」
「苗字は『ひめ』じゃなくて『ひめもと』。名前は『いつき』」
二人の間に沈黙が流れる。
それから自分の思い違いを理解したらしい彼女の瞳がぱっと開いて、口元に手を当てた。
「………あ、」
文字通り人が固まるところも、こんなに顔色が変わっているところを初めて見た気がした。
「ご、ごごごめんなさい!」
彼女はみるみる顔を真っ赤にすると、膝に顔がつきそうなくらいに頭を下げた。
「あの、高校の同級生に『元樹』っていう名前の人がいて、名簿見たときに同じ名前だなって早とちりしちゃって…って言い訳ですよね、本当にごめんなさい…!」
「いや、そこまで別に…」
それよりも、そんなに傾けていると手に持っている封筒の中身が出てしまいそうだな、とそっちの方が気に掛かる。すると、「あっ」と思うより早く、彼女の持つ封筒から中身の書類が滑り落ちて、床にぶちまけられた。