同期の姫は、あなどれない
 翌年の4月、R&Sソリューションズに入社して早瀬と再会した。

 新人研修では、基礎的な座学のあとはグループごとで取り組む課題が多かったのだが、内定式でのどこか頼りないげな印象が変わったのはこの頃だ。

 早瀬は周りのことをよく見ていて、誰かがつまづいていればそれにいち早く気がつくと、役割を変更したり他のメンバーに掛け合ったり、一番面倒な調整役を買って出ていた。

 それは俺に対しても同様で、必要以上に距離を取ろうとする自分とメンバーの間を取り持とうとしてくれていた。

 そして、たぶん決定的だったのはあのときだったと思う。

 入社して2ヶ月ほど経ったころの昼休み。
 その日の前日早瀬は体調不良で休んでいて、昼休みに研修の担当講師から預かった早瀬宛の資料を渡すため、本人を探していたときだ。

 研修ルームに戻る途中のリフレッシュルームで姿が見え、誰かと話しているところだったが気にせずに声を掛けると、振り向いた早瀬はひどく驚いていた。

 「悪い、これ昨日の分の資料。さっき預かったから渡しておく」

 「えっ、あ、ありがとう……」

 早瀬と話していたのは同期の柳田とかいうやつで、俺の顔を見るとそそくさとオフィスの方へと戻っていった。

 
< 85 / 126 >

この作品をシェア

pagetop