同期の姫は、あなどれない
 いよいよ準備をしなければいけない時間になって、私はベッドからのろのろと起き上がった。

 ぼんやりとした頭を何とかしようと軽くシャワーを浴びてから軽く髪を整えて、クローゼットから洋服を選ぶ。
 ちゃんと選んだつもりなのにいざ着てみると上下がチグハグで、そのつど何度も着替える羽目になった。

 そんなことをしているうちに出社する時間ギリギリになってしまい、私は砂糖もミルクも入れ忘れたコーヒーを無理矢理流し込んで、家を出た。

 どんな顔をして会えばいいんだろう。
 電車に揺られる間もオフィスに向かうまでの道のりでも、そんなことばかり考えていた。

 ◇◇◇◇

 結論から言うと、会わなかった。
 いや、会えなかったという方が正しい。

 私のいる三課の島は一課と少し距離があって離れている。
 私は、コピーを取りに行ったり対して急ぎではない社内便を出しに行ったりと、何かと理由をつけて席を立っては一課の島の様子を伺うけれど、姫の姿はおろかデスクにはPCもなかった。

 顔を合わせるのが怖かったはずなのに、なかなか会えないとつい目で探してしまう。

 私は事務作業の手伝いの傍らにさりげなく一課の人に聞いてみると、出社はしているようだけどずっと自席にいないらしく、どこで仕事をしているのか分からないということだった。


 そうしてまったく会うことがないまま数日が過ぎたとき、その理由は思わぬかたちで四宮課長から知らされることになった。

 
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