世界はそれを愛と呼ぶ


「……私ね、相馬が頭を撫でてくれるの好きなの。子どもっぽいかもしれないけど、抱き締めてくれるのも好き。私が傷つかないようにいっぱい隠し事して、私の前では何でもないように笑う相馬も好きだよ」

1度、口に出すと、本当に不思議。
あなたのことが好きなんだと、頭が理解する。
心から、貴方のどこが好きなのか分かる。

私を見る時、話す時、相馬の空気が柔らかくなる。
段々、目が優しくなって、宝物に触るように触れる手は優しくて。

「…………後悔するぞ」

「そうかな」

「普通の人間でいれば良かったと、俺なんかと一緒に生きる道を選ばなければ、と、そう後悔するお前を見たくないんだ」

「……」

この人は、本当に優しい人。
私が後悔するかどうかなんて気にしないで、勝手に好きにしたらいいのに。
それが出来ない優しさを、あなたは持ってる。

私が後悔する姿を見て、傷付きたくないとも思っているんだろうけど、私が後悔する姿を見て、傷付くってことはそれだけ、誰かを思いやる優しい人ってこと、私はよく知っている。

「……私が悪夢を見て、飛び起きた時。相馬はすぐに抱き締めて、頭を撫でてくれた。『大丈夫』って繰り返して、私の呼吸が落ち着くまで、眠りにつくまでずっと、ずっとだよ。決まった時間にご飯を食べさせてくれて、私が過ごしたかった普通の生活を過ごさせてくれて、相馬が居なかったら多分、私、また勝手に暴走して、家族とぶつかっていたと思う」

「……」

「この世界全部が敵な気がして、笑うことも、泣くことも許されないような気がして、そんな世界だったのに、相馬のそばは違うんだよ。だから、会いたくなるの。そばに居たくなるの。笑われちゃうかもだけど、相馬を好きだって自覚した瞬間からね、私、将来一緒にいるなら、本能であなたがいいって、私思ってる」

身体の中心から、湧き上がってくる愛しさ。
私を抱きしめて離してくれないあなたを、私も抱きしめたい。

─なんてかなり恥ずかしいことを、いっぱい話して、そのまま、彼の温もりに包まれたまま、寛いでいると。

「……わぁっ!」

急に視界が反転して、大きくて優しい手が後頭部を支えてくれたまま、沙耶は相馬を見上げていた。

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