世界はそれを愛と呼ぶ
side相馬


─……完全に取り乱した。
頭の中がぐちゃぐちゃになって、混乱した。
なのに、沙耶は優しい言葉を投げ掛けてくるから。

やっぱり、愛しいなという想いを感じてしまって。
封じ込めなくてはならないものだと言い聞かせていたのに、サラッと沙耶はカミングアウトしてくるし。

何とも言えない気分になって、とりあえず拒絶されようと、どんな結末になろうと、話すことにした。

相馬が座れば、沙耶も座った。
触れていたくて呼べば、素直に応えて。
あまりの無防備さに、何かが外れそう。

同時に思い起こされる幼い頃の記憶から、スルスルと紐解かれていくような感覚。

「……いくつか聞いていい?」

沙耶のその言葉で、現実に引き戻される。
どこまでも疑問を追いかけてしまう、幼い頃に身につけた癖は未だに消えず、思考の渦へ沈むところだった。

「まずさ、家に認めてもらうって?」

「ああ……我が家は1000年以上前からある建物に、新しい建物を繋ぎ合わせたり、直したりを繰り返している家だから、なにか宿っているんだろうな。その証明というか、当主となる子どもは、当主の証とされる首飾りに嵌め込まれている宝玉を持って産まれてくる」

そう言いながら、相馬が首元から取り出して見せると。

「これ……水晶?」

「俺はな。父さんは透けたピンク色、祖父は透けた緑色だったと」

「宝玉を握っていることが、条件なの?」

「多分?それ以外が当主の座につくと、なんていうか、命を落とすんだよ。少なくとも、数百年前からの時事誌で分かっているんだけど、最短は一日」

「それは早いね」

「だから、まともな頭を持っていれば、当主になろうとするものは少ないんだ」

沙耶は不思議な現象に感動しているらしく、どこか知的好奇心に満ち溢れたような顔をしている。

「じゃあ、相馬は家に認められたんだ?」

「そうなるな。じゃあ、次は里って?」

「里は……そうだな。簡単に説明すると、人が足を踏み入れることができない土地にある、鬼の里のこと」

「鬼……!?」

「そう。御園の始祖、伴侶が鬼だったから」

「……」

流石の沙耶も黙り込んだ。
怖かったか、と、心配したのも束の間。

「……鬼って、本当にツノある?」

と、キラキラした目。

「…………あるよ」

子供のような瞳に見つめられて、そこ?という思いと、怖がってないのか?という思いと、様々、複雑に。


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