世界はそれを愛と呼ぶ
「……最近、四季の家がきな臭い」
相馬が呟くと、凌さんは微笑んだ。
「同じ意見で安心した。─潰すには、あまりにも増え過ぎたから、霞兄さんが楽しそうで」
「それは……」
「止めたければどうか、御園当主として御命令を」
「……それで止めても、隠れて何かするだろ?」
「……」
我が兄、総一郎ならばすると思い見ると、目を逸らす凌さん。
「俺に、俺達に連絡を寄越したのは、沙耶を安心させるため、また、完全に四季の家の膿を出し切るため、という認識で?」
「ああ。話が早い」
「四季の帝王様ならば、そうするかと」
ニコッと笑ってくれるのは、心強い。心強いが。
「……その四季の帝王様っていうの、二度と言わないで欲しい」
「嫌?」
「嫌だ。色々と通り名がつきすぎて、恥ずかしいんだ」
「そこら辺、普通の子供らしくて安心する」
遠慮はいらないと伝えたからか、笑ってくれる。
本当に笑い飛ばして、なかったことにして欲しい。
「四季の代表者は?」
「神宮寺家はいつも通り、俺の良きように、が、答えだよ。当主は基本、俺が道を外れそうな時以外、止める気はないと言ってるから……それはそれとして、問題がひとつある」
「問題?」
「総一郎兄さんの側近が、神宮寺の後継者」
その簡潔な言葉で、全てが通じたらしい。
「……何があっても、知らぬ存ぜぬで通しましょう。間違いなく、証拠は残されないでしょうから」
もはや、何か起こる前提らしい。
本当、大人しくしていてくれ、と、思う。心から。
……無理だろうけど。
「─ともかく、俺が言えるのは、常磐当主にはそんなに力がもう残っていないということかな」
「そうなのか?」
「ああ。天に召される寸前か、最近は特に信仰にハマっていらっしゃる。身内には無関心だ」
「そうか」
─彼らが仕えている名家、それは、常磐家。
四季の家の中ではいちばん、原因不明の死者が出ており、その内部調査のため、10年ほど前に、鳳月霞によって送り込まれた。
「最近、あったゴタゴタは?」
「どれから話すか悩みますが、そちらの間諜から伺った内容に関しては、報告出来ますよ」
相馬が無意識にも当主として尋ねたからか、彼は臣下としてお茶目に答えてくれる。
あまりにも早急過ぎた自分を落ち着かせる為、深呼吸をすると。
「─そこまで大事にされちゃ、健斗さんも君に託したくなるね」
と、爽やかな笑顔を向けられる。
「え?」
「沙耶のことだよ。健斗さん達の前だけじゃなく、ずっと、君は自然に沙耶を守ってくれたみたいだから。付き合ってるの?」
「……ええ、まあ。つい先日」
「そっか。君なら、沙耶は幸せになれるね」
過剰な信頼を受けている気がしてならないが、任せてもいいと思われるほど、信頼されるのは嬉しい。
「─さて。じゃあ、家にお邪魔して、俺達は男で集まり、報告会としましょうか」
沙耶と幸さんの感動の再会が終わり、こちらの様子を気にし始めたタイミングで、切り出す凌さんは本当に上手く、常磐家の中で立ち回っているのだろう。
彼もまた、最愛を守るため。
─北御門家出身の、愛妻を、家族を守る為に。
(見習わなくちゃな)
相馬は改めて気を引き締め、彼のあとを追った。