世界はそれを愛と呼ぶ


「─それで、彼がなんだっけ」

「御巫統様といえば、御園家への忠義が厚すぎて、家を興したと言われている方ですよね」

「一応、そういうことになっていますが、大叔父の場合、高校卒業したら家を出る予定だったところ、国からの依頼が来て、仕方なしに御園家の隠密として仕事をしていた最中、後の第一夫人となる女性と出会い、その女性の身の上を調べる関係上、御園で動くのは色々と面倒であるということで、家を興したらしいです」

「第一夫人ってことは、第二夫人とかも?」

「います。そもそも、第一夫人とは恋愛云々ではなく、復讐とかの方面が強かったらしく」

御巫統は祖父の実弟でありながら、呪いの影響も少なめであり、そして何より、とても良い人。
御園家に産まれてくるにはあまりにも勿体ないくらい、とっても良い人である。

「え、じゃあ、人助け?」

「そうなりますね。第二、第三夫人まで迎え、それぞれときちんと関係性を築き、子も授かっています。夫人同士の仲も良く……ただ、第三夫人が子を連れて家出後、子は行方不明のまま、第三夫人が遺体で発見されるという事件も発生しまして」

「それって、事件?事故?」

「事件ですね。残されていた遺書からも、恐らく、何かに狙われていたのだろうと、結論が出ています。その為、子を連れて逃げたのだと」

「その子は……」

「後に調べた結果、寸前で御堂(ミドウ)に預けられ、そこで育ち、自然と組織に所属していたことまでは確認が取れました。しかし、発覚した時点で、その子も既に亡くなっており、事件は現在も迷宮入り状態です」

「……情報がめちゃくちゃ多くて、ちょっと待って欲しいんだけど……御堂って、今は御国となった、かつての御園家の暗部だよね」

「はい。国からの依頼を含め、護衛や暗殺業を生業としていましたね」

「それ、法律的にどうなんの」

「……お得意の、見て見ぬふりですよ。だから、無駄なことは絶対にやらせないよう、手を無闇に穢させることがないよう、御園が目を光らせていました。しかし、向こうから来る場合にはどうしようもなく、最終的に御堂の血筋を継ぐ娘を遺し、全員、亡くなりました。その娘が今、御国のトップですね」

当たり前だが、御園家周辺はずっと騒がしい。
暗殺だなんだと、その根幹を探るのが難しく、時間もかかる。

「そこで、第三夫人の娘が生きていたと、」

「はい。ですが、とある方を守って亡くなったそうです」

「とある方?」

「凌さんは聞き覚えがあるかもしれませんね。─常磐知尋(チヒロ)様、御存知ですか?」

その名前を聞いた瞬間、凌さんは頷いて。

「勿論。常磐当主第一夫人の御子で、身体が弱く、早世された方だろう」

「そうです。その方と結婚されていたようで、最後は夫婦共々、消されています」

相馬が情報を淡々と告げると、彼らは顔色を変えた。

「なんでそんな……知尋様は産まれた時、双子であったと聞いている。そのことで、第一夫人は叱責を受け、その後、亡くなられたと……その死因からして、恐らく他殺とされている中、その御子息まで?」

「不思議な話でしょう。その時点で振り返れば、彼は既に第二夫人を迎えています。そして、常磐知尋と双子であり、兄の方である常磐仁(ジン)は未だ存命」

「ああ。今も時折、秋乃様に会いこられて……」

「双子諸共ならともかく、どうして仁は見逃されているのでしょう?なぜ、常磐知尋だけを消す必要があったのか」

相馬がそう問うと、ふたりは顔を曇らせる。

「わからないでしょう。─だから、四季の家周辺で起こった事件は何もかも、未解決事件として、国は片付けるんですよ。変なことをして、仕返しを受けたくありませんし。……かつて、そういう家を裏で制していたのが、御堂家です。それを通じ、御園家が主導権を握り、上手く調整していました。が、今はそうはいきません」

「御堂家が無くなったから、治安が悪化していると?」

「その線も考えていいでしょうね」

相馬からしたら、用意した舞台で踊る愚か者、くらいにしか思わない。

御堂家が無くなった時、『御園家のマリオネットが無くなった』と噂が水面下で広がっていたことを知った時、言い表せない感情が、腹の中で渦巻いた。

< 192 / 218 >

この作品をシェア

pagetop