世界はそれを愛と呼ぶ
「─ゴホッ、ふたりが変わらず仲良しで嬉しいけど、今は任務を優先しようね」
胸がきゅーってして、何とも言えなくなっていると、久遠様がわざとらしく咳払いして、綺羽の意識を現実に戻してくれた。
優しく微笑む彼は、未だに最愛の、番と呼べる御園希雨様がお眠りになられている状況にも関わらず、腐ることなく、折れることなく、日々、任務を果たしながら、最愛の希雨様の帰りを待たれている。
しかし最近、どんどん弱られているような気がして、綺羽は不安に駆られていた。
予測の範疇ではあるが、御当主である相馬様曰く、御園家の呪いが関係しているのではないか、との事だった。
あの方が言うならば、それがほぼ正答だろう。
だが、それが正答とされれば、希雨様を目覚めさせ、救う方法が無くなってしまう。
そうなると、希雨様に待ち受けるのは“死”だ。
しかも、身に流れる鬼の血による、餓死。
「久遠様」
「どうしたの、綺羽」
「そのっ、私、希雨様の……」
すると、久遠様は微笑まれて。
「大丈夫。綺羽のせいじゃないよ」
─その微笑みは、とても弱弱しい。
話を聞く限り、治癒力の強い京子様でもダメだった。
それを聞けば、その次位の綺羽では勿論、ダメだろう。
……だって実際、ダメだったもの。
なら、どうすれば目覚める?
どうすれば、また、希雨様とお話出来る?
「綺羽」
柚琉がそっと抱き締めてくる。
「っ、私、」
「大丈夫だよ。相馬が諦めるわけないもん」
「でも、っ」
「ね、兄さん。諦めないでしょ」
柚琉はいつも前向きで、無理だって、終わってしまったって、どんなに下を向いていても、上向かせてくれて。
「─っ、ああ」
久遠様は柚琉の顔を見て、少し泣きそうな顔で、フッ、と、笑う。
「良し!じゃあ、とりあえず、潜入任務を成功させないとね?えーーと、なんだっけ。最近、よく名前を聞く会社の第一施設を爆破すれば良いんだっけ?」
柚琉は首を傾げながら、ニコッと。
「お前な……簡単に言うなよ」
久遠様は柚琉のとんでもない発言に引いた顔をしながらも、「それはプランBだから」なんて言ってる様子からして、間違いなく、プランには入ってるらしい。
「……」
─……これから、侵入する施設。
ここに御国家の人が加わるにしろ、この兄弟ときちんと行動出来るか、早々に不安を感じ始めた綺羽だった。