世界はそれを愛と呼ぶ


「君にとってどうでも良くても、周囲はそうはいかない。現状、僕もそうだけど……朝霧家を続けるために、誰かと結婚し、子を成せとは言わないから」

「……」

「だから、希雨を助ける方法を一緒に見つけて欲しい。その為に帰ってきて欲しいんだよ」

総一郎からすれば、父である春馬は可哀想な人。
よく頑張った、母親の被害者。
だから、本当はずっと自由に生きていって欲しいし、母に強制的に繋がれた縁ではなく、本当の心から愛することができる、本物の番を見つけ出して、残りの人生を幸せに満ち足りたものにして欲しいと願っている。

だが、同時に許せない思いもある。
全てを投げ出し、相馬に背負わせた父を許せない一方、父に同情もしてしまう総一郎はふらふらすることで、周囲に結婚の意思が薄いことを示し、身体的事情で宿命から逃げ回り、相馬に負荷をかけ、父親と似た存在に同化することで、自分の曖昧な心を誤魔化していた。

「……私は、総一郎様に会いたくなかった」

「……」

「京子様にも、水樹様にも、氷月様にも」

彼は両手で顔を覆って。

「相馬様にも、合わせる顔がありません」

懺悔するように震えた声で呟く彼は、

「─……私が、殺したんです」

と、涙ながらに告白してきた。

「あなた達の母親を、殺したのは私です」

真っ直ぐに、彼は総一郎を見つめている。

「……どういう意味か、聞いても?」

総一郎の記憶上、母は自ら首を切った。
それなのにも関わらず、自分が殺した、などと。

総一郎が訊ねると、彼─朝霧相志(ソウシ)は微笑んで。

「私が、和子様の番だったんです」

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