取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「警察に行きましょう」
「もういい」
 彼は、彼の腕を掴む優維の腕をそっとはずす。

「君に信じてもらえないなら、ここにいる意味はない」
 その言葉はナイフのように優維の胸に突き刺さる。
 実際、無条件で彼を信じているわけではない。信じたい気持ちと信じられない気持ちが入り乱れ、常に天秤が揺れている。

「あの男と会ってた時間、明日からは引き継ぎに使ってもらう」
 皮肉をこめて言われ、優維はうつむく。悲しみが広がるが、否定する言葉を持たなかった。

「せっかく神社を手に入れられると思ったのにな」
 彼から出た言葉に、優維は目を見開いた。
「神職に興味を持ったときからこの神社を狙っていた。君がひとり娘なのを知っていて父親に気に入られるように気を配り、ようやく近付いたら借金騒動だ」
 荒々しい口調に彼のやるせなさが現れているようだった。

「逆に言えば金で手に入るチャンスだった。ちょうど仮想通過であぶく銭もある。うまく言いくるめてあと少しだったのに」
 憎々し気に吐き捨てる。その目は優維を見ることがない。

「嘘よ」
 あんなに甘い言葉をくれたのに。甘く抱きしめてくれたのに。
 こんなに好きにさせておいて、なのにそれが嘘だったなんて。
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