取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
 一方で、信じたい、信じようとしてくれている彼女がいじらしくもあった。
 一度は自分から拒絶したのに、彼女にだけは信じてほしい気持ちが抑えられなくなってしまった。

 一生気にしてくれとか、未練がましくて笑える。
 自嘲に口元を歪め、窓の外を見る。
 結局、彼女は信じると言ってくれた。その気持ちがうれしい。

 だからこそそばにいてはいけない。神社は氏子がいて成り立つものだ。その総代と対立してしまっては彼女の望む未来はない。
 だが、真犯人がわからないままではまた根古間神社が狙われる心配がある。杜澤聖七もどこか信用ならない。

 だから総代会のあとにすぐ、持てる武器を利用して解決の鍵を探していた。
 こうしてハワイに発つ今も、少しでも優維の役に立てないかと考えてしまう。
 景色は流れていくが、彼女を思う気持ちはいつまでも心に留まり、流れてはいかない。

 出会いは高校のとき。
 同級生とは表面だけ取り繕って仲良く見せて、心は孤独だった。

 成績で一番をとりさえすればいい。
 そう思っていたのに、一度だけ、彼女に英語で抜かれた。

 廊下に張り出された順位表の前で、彼女は周囲の友達に褒められて「まぐれだよ」と照れ臭そうに笑っていた。
 まぐれで抜かれたなんて。
 許せない気持ちで、彼女を観察してしまった。

 すぐ、まぐれではないと気が付いた。
 真面目に授業を受け、手があけば単語帳を見て、友達と英語で問題を出し合う。
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