取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「料理はもう頼んでありますから」
「こんな高そうなところ……」
 自分には分不相応で、『猫も茶を飲む』と言われてしまいそうだ。

「ここなら邪魔が入りません。安心して」
 入室した給仕が食前酒(アペリティフ)をテーブルに置くと、ぱっと花が咲き、光の粒となって弾けるように消えた。

「まずは食事を。話はそれからです」
 納得できないままに優維は頷く。
 車に乗ったら着いてからと言われ、着いたら食事をしてからと言われる。こんな調子で話ができるのだろうか。

 落ち着かないまま料理をいただくが、とてもおいしかった。
 皿の上にも花が咲いては消えた。
 料理によって映像が変わるのも面白かった。魚料理では海の景色、肉料理ではさわやかな高原。
 食事の進行と共に空は徐々に暮れ、最後には満月と星空が広がっていた。

 デザートを終えると、店員が食後酒(ディジェスティフ)のワインをソファの前のテーブルに用意する。ワイングラスは脚が長く、グラス部分はチューリップのようにすぼまってから広がっている。

 彼が移動するから、仕方なく優維もその隣に腰掛ける。
 花畑を歩くと軌跡のように光が追って、きらきらと消えた。

 聖七から渡されたグラスを片手に、優維は自身にいら立つ。
 話をしに来たはずなのに、仮想の美しい景色の下で豪華な食事を楽しみ、お酒を飲んでいる。こんなはずではなかったのに。
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