取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「そろそろ、本題に入りませんか」
「そうですね」
 ワインを一口飲み、彼はふうっと息をついた。

「甘くておいしいですよ」
 優維も一口飲んでみる。甘い味と芳香が広がった。

「大藤神社の方から、少しだけ情報を得られました」
「どんな!?」
「覚悟はできていますか? いい話ではありません」
「大丈夫です」

 優維はグラスを置いて聖七に向き直った。
 聖七もグラスを置き、優維に向き直る。
 ローテーブルでふたつの星が生まれ、散るように流れた。

「草凪千景は、大藤神社の宮司の娘をもてあそんで捨てたそうです」
 優維は目を見張った。
 いつだったか、彼女は千景に会いに来ていた。
 父が許してくれた、というのは窃盗ではなく彼女のことだったのだろうか。

「それで娘さんはずっとふさぎ込んでいて、今では家から出てこないのだとか。窃盗の上に、女性にそんなことを。同じ男として許せそうにありません」
 悔しそうに彼は言う。

「嘘……」
 千景は優維に無理強いをしなかった。確かに最初は強引だったが、あれ以来は待ってくれていた。女をもてあそぶ人がこんなふうに待ってくれるとは思えない。

「盗難については緘口(かんこう)令が厳しいようで、新情報はありません。優維さんの神社ではどうですか?」
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