取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「ですが、私には彼が犯人だと思えてなりません」
 聖七の言葉に、優維は顔をひきつらせた。
「人づてに聞きました。あの男はハワイに行ったそうですね?」
 優維はためらうように頷く。

「それが答えではありませんか? 無実だと言いながら外国に逃げる。実際には犯人だからでしょう」
「そんなことないと思います」
 答える優維に、聖七ははっとして顔を向ける。

「離婚届けは書いてもらっていますか?」
「はい。今は私が持っています」
「良かった。でもまだ出していないのですね?」
 うつむく優維に、聖七が優しく声をかける。

「愛のない結婚だったと聞いていましたが、違ったのですか?」
「どうしてそんな話」
「どこからともなく漏れてくるものですよ、こういものは」
 優維はワイングラスを手に取り、一口飲む。テーブルにグラスを戻すと、星が流れた。

「最初は確かにそうでした。でも一緒に暮らすうちに好きになりました」
「情が移っただけなのでは?」
 優維は首をふる。

「私は彼の無実を証明したいんです」
「しかし……」

「今は状況証拠だけですよね。もうひとり怪しい人を知ってるんです」
「もうひとり、ですか?」
 聖七はいぶかしげに尋ねる。
< 122 / 148 >

この作品をシェア

pagetop