取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
 いたたまれない気持ちで必死に祝詞に集中しようとする。
「……祓い給い清め給う事を天つ神(くに)つ神八百萬神等共(やほよろずかみたちとも)に聞こし()せと申す」

 結局、集中できないままに奏上を終えた。
 三人で深々と二回、お辞儀をしてから二度の柏手を打ち、一度の礼をする。
 最後にまた太鼓を叩いて儀式を終えた。



 いったん自宅に戻った優維は、昼食の準備をしてから社務所に向かう。
 すでに千景と直彦がいて、社務所を掃除していた。

 直彦は優維に気が付き、声をかける。
「こっちはもう終わるぞ」
「じゃあ外の掃除をしてくるね」
 直彦に告げて、竹ぼうきを持って境内に行く。

 神社ではなにはともあれ掃除をする。神は穢れを嫌うからだ。
 日曜日であっても参拝する客はおらず、境内は閑散としていて猫の子一匹いない。

 さわやかな日差しの下、ざ、ざ、と竹ぼうきの音が響く。
 落ち葉の多い秋にはブロアーを使ってばあっと一気にやるが、今の時期はそれほどでもない。
 掃除を終えて社務所に戻ると、千景と直彦はパソコンの前で事務の引継ぎをしていた。

「データはこれだけですか?」
「そのはずだが」
 直彦の言葉に、千景は難しい顔をして黙り込む。
< 39 / 148 >

この作品をシェア

pagetop