取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
 事務だって人や会社を支えている。
 だが、目立った成果が出る仕事ではない。神社では立ち位置が中途半端でなにも任せてもらえない。あとから来た千景のほうが結果を出している。
 もやもやしながら冷蔵庫を開けて中を確認して献立を考える。

「今日は暑いから……」
 鶏肉の甘酢炒めに小松菜と揚げの煮びたし、サラダ、わかめと豆腐の味噌汁に決めた。
 手を動かしていると、次第に心が落ち着いてくる。

 今の自分は自身で選択してきた結果だ。彼女が輝いているのは彼女が頑張ってきた結果だ。
 これから千景と一緒に神社を盛り立てていくのだから、すぐに役に立てなかったからといって落ち込む必要はない。

 そう思いながら味噌汁の味見をする。なんだか塩気が心地よく感じられた。
「おいしい」
 満足して振り返ったときだった。
 千景がやわらかな笑みを浮かべて立っていて、どきっとした。

「いつからそこに?」
「ちょうど今。話が終わって谷越さんは帰ったよ。味噌汁、おいしい?」

「うん、おいしくできたよ」
「俺も味見したいな」

「わかった、すぐ用意するね」
「しなくていい」
 言いざま、千景は優維を抱き寄せてキスをする。
 舌を絡めて優維を味わってから彼は唇を離す。
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