取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「おいしいな」
「……もう!」
 キスの口実に味見だなんて。

「さっき、なにかあった?」
 千景に問われて、優維はぎくっとした。平静を装ったのにバレているなんて。

「なんでもない」
「優維さんの気になることはなんでも言ってくれ」
 優維は迷い、結局、口を開いた。

「……たぶん、嫉妬した」
 彼女が輝くように仕事していることにも、千景と対等に話をしていることにも。
 千景に頼りにされるのは自分でありたかったのに。
 なにより、千景が自分の知らないところで女性と会っていることが一番もやもやした。

「それは嬉しいな」
 千景は優維を抱きしめる手に力をこめる。
「俺が愛してるのは優維さんだけだ」
「でも、わたしなんて『あってもなくても猫のしっぽ』じゃない?」
 あってもなくても同じ、という意味のことわざだ。

「猫のしっぽは重要だ。バランスをとったりコミュニケーションをとったり。短くても長くてもかわいい。まるで君のようだ」
 心地よい声に耳をくすぐられ、優維は彼の背に両腕を回す。
「優維」
 呼び捨てにされ、胸がどきんと高鳴る。
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