取引婚をした彼女は執着神主の穢れなき溺愛を知る
「今夜……」
 千景が言いかけたときだった。
「ただいまー!」
 玄関から声が聞こえて、優維と千景は慌てて離れた。

「暑いからビール買って来たぞ。一緒に飲もうか」
 直彦が機嫌よさげに台所に入って来る。

「ありがとう、冷蔵庫に入れておいて。ごはんはもうすぐできるよ」
 平静を装って優維が言う。

「毎日ありがとな」
 直彦はビールを冷蔵庫に入れてテーブルにつく。

「では私は着替えてきます」
 千景はそう言って台所を出て行く。
 料理の仕上げをしながら、優維は千景がなにを言いかけたのか気になって仕方がなかった。



 千景と直彦が晩酌で盛り上がっていたので、先に食事を終えた優維はシャワーを浴びた。
 千景が言いかけたのはなんだったのだろう。
 今夜、と言っていた。昨日も「今夜」と言いかけていた。
 わしゃわしゃと勢いよく頭を洗いながらひとつの可能性に思い至り、顔が熱くなる。

 今夜結ばれたい、みたいなことだったりして。
 ざーっとシャワーを浴びて、邪念も一緒に流せないかな、と思う。
 彼とはあの日以来、触れ合いはない。
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